山椒の辛味成分とは

山椒レシピ番外編-山椒の辛味成分とは?

日本最古の香辛料として知られる山椒は、ピリッとした辛味と柑橘類に似た爽やかな香りが特徴です。山椒の辛味は料理の味に深みを加えるほか、天然由来の医薬品である生薬としても用いられてきました。古来から日本人に愛されてきた山椒には、どのような辛味成分が含まれているのでしょうか?


■山椒の主な辛味成分は?
実だけではなく、花や葉などすべての部分を香辛料として利用できる山椒ですが、辛味成分は、主に実の部分に含まれています。

 

山椒の主な辛味成分は

・山椒に含まれるサンショオールとサンショウアミド
山椒の辛味は、主にサンショオールとサンショウアミドによるものです。現在、ミカン科のサンショウ属植物は世界中で250種ほど確認されていますが、不飽和脂肪酸アミドであるサンショオールは、それらサンショウ属植物に含まれている成分で、まだ熟していない青山椒にもっとも多く含まれています。
サンショオールという呼称の由来は、山椒(サンショウ)にアルコールを指す接尾語の「-ol(オール)」を付けたもの。ひと口にサンショールといってもいくつか類縁体があり、α-サンショオールやβ-サンショオールなどが存在します。とくに、中国・四川省産の山椒に含まれているヒドロキシ-α-サンショオールは、サンショオールの中でも強力な成分で、口の中の特定の神経線維を活性化し、ピリピリと痺れるような感覚を引き起こします。

・山椒の辛味成分の効能は?
通常、甘味や酸味は味覚神経で感じますが、辛味は味覚神経ではなく、感覚神経が刺激として感じ取るものです。ですから、厳密には山椒の辛味は「味」ではありません。また、辛味には熱に強い不揮発性のものと熱に弱い揮発性のものがありますが、山椒の辛味は熱に強く持続性があるので、不揮発性の辛味に属します。
山椒は漢方の生薬として、大建中湯(ダイケンチュウトウ)や椒梅湯(しょうばいとう)に配合されてきました。山椒の辛味成分であるサンショオールとサンショウアミドは、内臓器官の働きを活発にするため、消化不良の改善、冷えの改善、ガス溜まりによる腹痛の改善が期待できます。さらに、発汗作用や新陳代謝を活発にする働きもあるといわれています。

 

■ユニークな山椒の辛味

辛味にもいろいろな種類がありますが、山椒の辛味成分は唐辛子や胡椒とは異なります。ここでは、唐辛子の辛さとの違いと山椒の辛味を和らげる方法についてご紹介します。

・山椒の辛味は唐辛子とは異なる
山椒の主な辛味成分はサンショオールとサンショウアミドなのに対し、唐辛子の辛味成分はカプサイシンです。サンショオールもカプサイシンも脂溶性の成分なため、水に溶けることはありません。また、山椒も唐辛子も同じ不揮発性の辛味です。
このように共通点はあるものの、それぞれの分子構造を比べてみると、違いがはっきりします。バニロイド類であるカプサイシンはバニリル基を持ちますが、サンショオールにはバニリル基がありません。
カプサイシンの場合、バニリル基がイオンチャネル型受容体のTRPV1と結びつき、焼けつくような痛みを引き起こします。しかし、サンショオールにはバニリル基がなく、灼熱感を伴う辛味は感じられません。むしろ、サンショオールは麻酔薬のような働きをして、しびれるような辛味に感じられますから、唐辛子と山椒とでは辛味の感覚に大きな違いがあります。
さらに興味深いことに、カプサイシンは不快な刺激や痛みを感知するニューロンを活性化しますが、ヒドロキシ-α-サンショオールは、優しく触れるといった無害な刺激を感知するニューロンを活性化することが明らかになっています。

 

ユニークな山椒の辛味

 

・山椒の辛味を抑えるには
清涼感をもたらす山椒の辛味ですが、中には苦手な方もいらっしゃるのでは?水を飲んで辛味を消そうとする方もおられますが、山椒の辛味は水溶性ではありませんから、水を飲んでもなかなか辛味は消えません。
水溶性の辛味であるワサビとは違い、山椒の辛味は脂溶性です。そのため水ではなく、油に溶かして辛味を和らげることができます。おすすめなのは、アイスクリームやマヨネーズ。山椒独特の辛味を消したいのであれば、アイスクリームやマヨネーズを口に含めば、辛味が引いていくでしょう。

 

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